ミイラ男か半裸男か
今週のお題「ハロウィン」
ハロウィンが今年もやってくる
悲しかった出来事を 消し去るように(竹内まりや「すてきなホリデイ」より)
俺は竹内まりやではないし、今年のハロウィンは勿論ホリデイではない。
だが、今年もハロウィンがやってくる。っていうかすぐそこまで迫ってきている。
ハロウィンは近年話題になった行事で、世の中にはまだまだハロウィンのお祭り感に不快さを感じている人も多い。しかし俺は小さい頃に英語の個人塾に通っており、ハロウィンの仮装パーティーを楽しんでいたため、ハロウィンに懐かしさすら感じている。
今回はそんなハロウィンの思い出を書こう。
俺は幼稚園の3年間、ハロウィンパーティーに参加した。そして、その3年間ともミイラ男の仮装をした。
ミイラ男の仮装が一番安く済んだからだ。親は俺にミイラ男の格好よさを説き、俺は容易に洗脳された。だから俺は自分からミイラ男を目指し、親は俺の言うことを聞いている体で安上がりなミイラ男を作り上げた。
ミイラ男の仮装として、俺はトイレットペーパーを体に巻き付けるだけだった。
ミイラ男は「包帯」を巻いているからミイラ男なのであって、トイレットペーパーを巻いたら「トイレ男」かただの「変態」だ。それでも俺は自分が「ミイラ男」になったと信じて疑わず、周りの大人も「変態」とは認識しなかった。
体が小さい幼稚園児だから、使うトイレットペーパーの量も少なくて済み、事前の買い物も必要ない。コスト面だけで言えば、ミイラ男は最高の仮装だろう。
だが、このミイラ男にも欠点があった。
すぐに破れるのだ。
トイレットペーパーを一度も使ったことのない奇特な人にもわかるように説明しよう。
メモ帳の1ページより破れやすく、新聞紙よりも破れやすい。ティッシュペーパーとは良い勝負をするかもしれない。
薄い紙が1枚、(多くても2枚が重なった)だけのトイレットペーパーは、それはもう、簡単に破れる。
そんな薄い紙を体に巻き付けて、俺は仮装パーティーに参加していた。会場前に到着して、階段を上ると、股関節部分が破れる。お菓子や飲み物を取ろうとして、腋の下が破れる。そして、オリエンテーションのカボチャボウリングをすると、全身が破れる。
そうやってどんどん、破けていく。
仮装パーティーが始まって1時間もしないうちに、殆どのトイレットペーパーが破けていた。
後に残されたのは、半裸の幼稚園児だ。
半裸の幼稚園児は、自分がミイラ男から半裸の少年にジョブチェンジしたことにも気づかずに、仮装パーティーを満喫した。そして、来年もミイラ男になると固く誓った。自分が半裸の少年になっているなど、1mmも思わなかった。
今年、ミイラ男の仮装を予定している紳士淑女はご注意を。
半裸の幼稚園児ではなく、半裸の大人は、捕まります。