オープンセサミ

医学生が心の扉を解放して書くブログです。ゲーム、読書、勉強などなんでも書きます。ふざけた記事を量産したい。

珈琲を飲む人の気持ちがわからない理由がある

さいころから甘いものに目がなかった。

好きな食べ物はチョコレート。
好きな飲み物はココア。

大好きなチョコレートやココアを口にすることは数日に1度しか許されなかった。
自分が肥満児にならなかったのは、その制約のお陰であろう。

数日に1度訪れる至福のひと時は俺の生きる意味であり、人生そのものだった。
だが、人の欲望は尽きないもの。
俺は数日に1度では我慢が出来なかった。

なんとか親の目を掻い潜って甘いものを口にできないか。
俺はそんな邪な考えを胸に隠したまま、日々を過ごしていた。

そんなある日…。
両親が朝早くにショッピングへと出かけた。
俺は両親を玄関まで見送り、居間に戻ると衝撃的な光景が広がっていた。

居間の机の上に白いカップが置いてあり、その中には茶色い飲み物が残されていた。
恐らく両親のどちらかが飲み忘れたのであろう。



どちらが飲み忘れたかなんてどうでもいい。
俺にとっては奇跡のような光景だ。

俺が2日後にしか飲むことを許されない「ココア」がそこにあった。

飲み忘れたってことは飲んでしまってもバレないよな。
両親は夕方まで帰ってこない。
飲み切って、洗っておけば、両親は飲み忘れたことさえ気が付かないだろう。

でも、もしバレたら怒られるし、やめておこうかな。
両親も俺のためを思って数日おきの約束が作られたわけだし。

頭の中で天使と悪魔が戦った。
ジャブ、ジャブ、ストレート、ジャブ、アッパー。
その殴り合いは一方的な展開で悪魔が勝利を収めた。

その後の俺の動きは速かった。
勢いよくカップを掴んで椅子に座り、「ココア」を一気に口に含んだ。
含む前に異臭を嗅ぎつけたが、その時にはもう遅い。カップに残っていた茶色い液体は全て口の中に流れ込んだ。
そして…。


吐き出した。

なんだこの苦いものは。腐ってるのか?ヤバい不味い。病気になりそうな味だ。なんだこれ。罰が当たったのか。

様々な思考が一瞬で頭を駆け巡った後、俺は洗面所に駆け込んだ。
何回も、何回も口をゆすいで、お茶をがぶ飲みした。
そうして少し落ち着いた後、俺は猛烈に後悔した。

両親との約束を破ったから罰が当たったのだ。
恐らくあれは子供が飲んでいいものではない。
大人はあんなに不味いものを飲んでいるのか。
ピーマンの飲み物バージョンなのかもしれないが、間違いなく「ココア」ではない。

俺は憂鬱とした気持ちで吐き出した茶色い飲み物を掃除し、カップも洗って証拠を隠滅した。

俺はそれから両親との約束を破らない「良い子」になった。
自分の欲望に流されて悪いことはしてはいけない。
それを身をもって体験した。

だから、俺は今でも「珈琲」が大嫌いだ。